コロナ禍で衰えた?口の働き子どもだけではない「お口ぽかん」の脅威(えんがわ劇場 第223号)

約3年にわたってマスク生活となり、それは今も続いています。顔が隠されていると緊張感に欠けて、無表情になったり、さらに口元は緩んで口呼吸になったりしていませんか? 大きな声で話すことも制限されていますので、顔や口の筋肉の衰えを感じている人も多いのではないでしょうか。

問題は、普段、意識していない口の中の舌にも起きています。口で呼吸をしていると、舌は下の歯列(歯が並んでいるところ)に下がった状態(低位舌=ていいぜつ)のため、舌の筋力も衰えます。

舌は普段、上あごに付いているのがよいのです。それにより、成長期では上あごの成長を促し、よい歯並びやかみ合わせに導きます。舌は、のみ込む(嚥下=えんげ)時にも重要な役割をしていて、舌を上あごに押し付けることにより、嚥下します。高齢になると「むせ」や誤嚥(ごえん)が起こりやすくなるのはご存じでしょうか。これは喉と舌の筋力が低下するためです。

今こそ、家族みんなで口周りと舌の筋力を強化しましょう。そのために生活の中でできることをご紹介します。

①正しい食べ方をする

正しい食べ方とは「よい姿勢で口を閉じ、よくかんでゆっくり食べる」ということです。これを実践しましょう。口を開けた状態での「クチャクチャ食べ」では、飛沫(ひまつ)が飛びます。かまずに丸のみしてしまうと、窒息や誤嚥する危険性があります。早食いは肥満につながります。

②口をダイナミックに動かして「ブクブクうがい」

口の周りの筋肉の衰えを感じたら、ブクブクうがいの筋肉動作レベルを上げてみましょう。今までの2倍の力でほおを膨らませてブクブクすると、筋肉に負荷がかかり、筋力を強化できます。口元から水がこぼれないようにしようとするので、「お口ぽかん」の予防になります。

吐き出すときは、周りの方への配慮を忘れず、口をすぼめて低い位置からするようにしましょう。感染予防には、口腔内の衛生が大事ですので、一石二鳥です。水を使わない「エアーうがい」なら、いつでもどこでもできます。マスクの下で人知れず筋肉を強化できますよね。

③リズミカルに「ポッピング」

「ポッピング」は初めて聞く言葉かもしれませんが、舌の表面の全体を上あごにペタッと押し付けた後に、ポン!と離す動作のことです。ちなみに、いらいらした時にする「舌打ち」は、舌の先だけを付けるしぐさです。「ポッピング」とは異なりますのでご注意を。これも、いつでもどこでもできます。舌の力をつけるために、子どもとリズミカルに楽しみながら鍛えましょう。滑舌のトレーニングにもなります。

④口を閉じて「鼻呼吸」

口は鼻が詰まっている時など、鼻で息ができない時に呼吸を代用するところです。鼻で呼吸をすると、ウイルスや細菌などの異物の侵入を防ぎ、加温・加湿して、体に優しい空気になります。体の健康のためには、口は閉じて「鼻呼吸」をすることが大切です。もし鼻や喉の病気で鼻呼吸ができないときは、まずは耳鼻咽喉(いんこう)科で病気を治しましょう。鼻からいっぱい空気を吸うためには、舌を上あごに付けることもポイントです。

⑤「よい姿勢」を心掛ける

よくかんで安全にのみ込む、口を閉じて鼻で呼吸をする、ポッピングをするためには、姿勢が大事です。姿勢が悪いと、これらもうまくできません。スマホ操作やゲームをしている時の姿勢はどうでしょうか。猫背で首が前傾していませんか? 「ぽかん口」になっていませんか?

立つ時のよい姿勢は、真横から見て、くるぶし、太もものつけね、肩、耳が一直線になります。骨盤は立てて、背骨はまっすぐにし、肩も横に開くようにします。

座る時のよい姿勢は、骨盤を立てて座り、横から見て背筋はまっすぐで、肩と耳が一直線になり、頭は首の真上にあります。どちらもあごは軽く引いた状態です。

※下記画像をクリックすると、大きな画像をご覧いただけます。