「おじいさん」「おばあさん」と呼ばれてショック 「主観年齢」の若い人が得るもの、失うもの(えんがわ劇場 第224号)

あなたは自分を年齢より若いと思いますか、それとも老けていると思いますか? 自分が感じる「主観年齢」は、ある時点で実際の年齢と逆転。年をとるほどその差が開いていくことが過去の研究からわかっています。「気が若い」ことは心や身体にどんな影響を与えるのでしょう。

心理学や社会学では、実際の年齢を「暦年齢」、自分が感じる主観的な年齢を「主観年齢」と呼ぶ。子どものときは自分が暦年齢より年上のように感じる人が多いのですが、20代前半で暦年齢と主観年齢が逆転。主観年齢が暦年齢より若くなります。

大阪大学の佐藤眞一名誉教授を代表とする研究によると、30代の主観年齢は男性では実年齢より2、3歳下、女性では3、4歳下でした。その後の年代では性差はあまりなく、男女ともに40代は4、5歳下、50~60代は6歳下、70代は6、7歳下。上の世代になるほど、主観年齢と実年齢の差が開いていました。

いつまでも若くありたいと願うのは、人としてごく自然な気持ちです。気が若ければ、行動もポジティブ、かつアクティブになる。逆に気持ちが老けこめば外出も人づきあいもおっくうになり、自然と心身も衰えてきます。

「年相応」に見られることは屈辱的なことのようですが、たとえば自動車運転。暦年齢が高齢でも、主観年齢が若ければ「自分は昔から運転がうまいんだ」「まだ衰えていない」と自分を過大評価しがちになります。免許を返納するのはもう少し先にしようか、と思ってしまうのも無理はないかもしれません。自動車運転だけではない。「得意なはずの投資で失敗し、老後資金を失ってしまった」「足腰に自信があるからと登山にチャレンジし、骨折した」といったケースはありがちです。

老いを自覚し、認めることを心理学では「老性自覚」と呼びます。老性自覚をうながすきっかけは以下のとおり大きく二つあるとされます。

  • 外からの自覚:定年退職や引退、近親者の死、離別など、社会的な経験やライフイベント
  • 内からの自覚:体力の衰えや老眼、しわ、白髪、記憶力の低下といった、身体的兆候や認知的兆候、精神的減退。

現代では、内からの自覚があってもアンチエイジングに励めば、とりあえず時間を稼ぐことは可能でしょう。実際、日本老年学会によると、今の65歳以上の世代は10~20年前と比べ、5~10歳ほど若返っているといいます。

問題は年を重ね、心身ががくんと衰えた場合。ひたすら若さを追求し、老いを否定してきた人ほど、メンタル面の変化は大きいかもしれません。アメリカの研究では、65歳以上の高齢者の約10%にうつ病性障害が見られたといいます。

たとえば白髪が目立ってきたら真っ黒に染めるのではなく、白髪を生かしたヘアスタイルを工夫してみる。老化現象を発見すると焦りがちだが、前向きに受け止める気持ちをもつと不安も薄らぎそうです。

そのうえで、今の自分を役立てられる場を見つけたい。バリバリ働けなくても、ムリせずにやれることを続けていけば、楽しみも人の輪も広がっていきます。できれば、少しでも若いうちから第二、第三の「自分の舞台」をつくっておけるといいですね。

長い老後を上手に生きた先人が、江戸中期の武士で俳人の横井也有(よこい・やゆう)。53歳で引退し、82歳で没するまで友人たちと俳句や狂歌、漢詩、茶道などを楽しみ、隠居生活を謳歌(おうか)しました。「皺(しわ)はよる ほくろはできる 背はかゞむ あたまははげる 毛は白うなる」など、老いをテーマに数々の狂歌、俳文を残しています。

俳文集「鶉衣(うずらごろも)」では、「されば老(おい)は忘るべし。また老は忘るべからず」とも語りました。老いているからと活動を控える必要はありません。だが、老いを忘れて振る舞えば周囲から浮き、失敗してしまうという自戒の言葉です。

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