「得意なこと」と「やりたいこと」は一致しないんだよ。(えんがわ劇場 第217号)

「得意なこと」と「やりたいこと」は一致しないんだよ。だから、まずは「得意なこと」を見つけなさい。それが成功すれば「やりたいこと」はできるようになってくるから。萩本欽一

国民的コメディアンともいえる萩本欽一さんのことを、知らない日本人はほとんどいないのではないでしょうか。萩本欽一さんといえば、欽ちゃんの愛称で親しまれ、下ネタは一切やらないという、お茶の間のファミリーでも安心して見られるテレビ番組が大好評でした。そんな萩本さんの人生を変えた言葉が、この言葉です。

「得意なこと」と「やりたいこと」は一致しないんだよ。だから、まずは「得意なこと」を見つけなさい。それが成功すれば「やりたいこと」はできるようになってくるから。

なぜ「やりたいこと」よりも、「得意なこと」を見つけるべきなのか。その背景には、萩本さん自身が芸の道に入った当初、「やりたいこと」ができない状況に身をおいていた経験があります。

実は萩本さんがコメディアンを志したのは、お笑いが好きなのではなく、借金取りに泣きながら土下座していた母親に、家を建ててあげたかったからだそうです。そのこともあり、浅草の劇場での芝居や、テレビやラジオの仕事も、最初は「不得意」さを感じていたそうです。しかし経験を積み、芸に磨きをかけるうちに、苦手なことが少しずつできるようになっていき、その中から得意が生まれ、運が上がったといいます。

そこで萩本さんが得た教訓は、「嫌なこと、苦手なことをやっていないと、人は進歩がない」ということでした。萩本さんの哲学に、「人生というのは自分が何になりたいかじゃない。誰に必要とされているかなんだ」というものがあります。これも、やりたいことと得意なことの違いを知るために役立ちます。

もしも今、あなたが「やりたいことができない。嫌なことしかやらせてもらえていない」と考えたり、それをコンプレックスに感じているのであれば、「苦手を克服する」「苦手を得意に変える」「得意なことを見つける」ことで、人生が切り開かれていきます。

「自分のためでなく、他人(ひと)のために働け」片山象三

兵庫県西脇市では、織物の製造が盛んに行われています。そんな中、繊維を製造する機械を販売する会社があります。その会社の経営者である片山象三さんの人生を変えた言葉は、「自分のためでなく、他人(ひと)のために働け」でした。片山さんがまだ30代前半の頃、尊敬する染色工場の社長から言われた言葉だったといいます。

この言葉が、地元の繊維業界が疲弊し、会社の業績も下り坂の苦しい時期に、大幅なコストダウンを可能にする新型機械の開発を可能にしました。そしてそれが、内閣総理大臣表彰「第一回ものづくり日本大賞」を勝ち取った、大きな契機となったことは間違いありません。

「自分のためでなく、他人(ひと)のために働け」という言葉に感銘を受け、視点を自分から他人のためにシフトした片山さんは、「地元の地場産業を衰退させないため」に、安い中国製品に対抗するべく、新しい機械の開発に着手。失敗や苦労を重ね、3年後にようやくできたのが、大幅なコストダウンを可能にした新型機械だったといいます。

片山さんが、何度失敗してもあきらめなかったのは、もちろん、勇敢な性格の持ち主だったことも理由の一つかもしれません。しかし同時に、いつも自分のためでなく、「地元のため」に動いていたことも、成功を勝ち取る大きなベースとなっていたのではないでしょうか。

このように「誰かのため」という利他性を発揮することは、自分の苦手やコンプレックス、行き詰まりを解消して、突き抜けるために有効です。

「あなたは自分の仕事、能力、行動を通して、誰をハッピーにしたいですか?」。あるいは「あなたの仕事、能力、行動は、誰を幸せにできますか?」

※オマケ!

「拍手されるより、拍手する方がずっと心が豊かになる」

高倉健

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