厚生労働省によれば、日本に暮らす65歳以上の認知症の人の数は、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)になるとのことです。これだけ、認知症の発症率が高い状況で、日本における高齢者の数は、今後もどんどん増えていきます。日本全体としての問題であることはもちろん、私たち一人ひとりの生活にも、認知症による直接的な影響が出てくることは間違いありません。
認知症とまでは言えないものの、認知能力に問題があり、正常とも言えない状態のことを、特に「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」と言います。MCIの場合、日常生活をすごすことに深刻な問題はないのですが、MCIの人の約半数は、5年以内に認知症に移行するといわれています(厚労省による見解)。MCIとは、簡単に言ってしまえば、認知症の一歩手前の状態です。
ここで、65歳以上の高齢者でMCIの人の割合は15~25%と推定されています(『認知症疾患診療ガイドライン2017』日本神経学会監修、 CQ4B-1、 p145)。高齢者の4〜6人に1人ということですから、かなりの割合です。MCIという概念を念頭に置いて周囲を観察すれば、誰でも、すぐ身近に発見できる可能性が高いと思われます。
認知症のチェックテストは、大きく分けて、周囲の家族などが観察をすることで認知症の疑いを発見するテストと、本人が自分で行うテストの2種類があります。
それぞれのチェックリストで、いくつか心配なポイントがあれば、MCIを疑い、専門医に早めに相談することが大切です。MCIから本格的な認知症に移行してしまわないよう、生活習慣の見直しや栄養指導など、専門医からのアドバイスを受ける必要があります。
千葉県の認知症チェックリスト
横浜国立大学「社会老年学」のリサーチペーパーに掲載されたリスト
認知症患者の介護は、介護の中でも負担が特に大きくなりやすいです。そして残念なことに、今後の日本では、どの家庭でも認知症と向き合うことになります。だからこそ、認知症の前段階とされるMCIを見逃さず発見し、主治医と連携して、早期対応をすることで、予防を目指すことが重要になります。この記事が、その第一歩となれば幸いです。
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